線形代数

有限体上の線形代数を探訪する ~ 双対空間編 ~

ここまで長らく有限体上の線形空間について考えてきた。本稿ではそのフィナーレとして、有限体上の線形空間の双対空間について考えてみる。 線形空間の双対空間 双対空間の定義をWikipedia[1]より引用する。 双対空間 体上の任意のベクトル空間の(代数的)…

有限体上の線形代数を探訪する ~ 固有値・固有ベクトル編 ~

前回の記事では有限体上の線形空間における直交補空間について考えた。本稿ではその続きとして固有値と固有ベクトルについて考えてみる。 固有値と固有ベクトル 固有値と固有ベクトルの定義を本[1]より引用する。 固有値と固有ベクトル を上の線型空間, をの…

有限体上の線形代数を探訪する ~ 直交補空間編 ~

前回の記事で有限体上の線形空間の定義の妥当性などを確認した。本稿ではその続きとして直交補空間について考えてみる。なお、本稿で扱う線形空間は特に断らない限り有限次元であるとする。 ベクトルの直交性 直交補空間とは、平たく言えばある部分空間に属…

有限体上の線形代数を探訪する ~ 線形空間から次元定理まで編 ~

前回の記事から随分と間が空いてしまったが*1、本稿では有限体上の線形空間について考えてみたいと思う。単に線形空間とだけ言うと対象が広大になり過ぎるため、本稿では次元定理が成り立つことを確かめるところまでをスコープにする。そのために、まずは線…

有限体上の線形代数を探訪する ~ 行列編 ~

前回と前々回の記事では有限体の元を成分に持つ数ベクトルについて調べた。本稿ではその続きとして、有限体の元を成分に持つ行列について考えてみたいと思う。 確かめたいこと あまり網羅的なアプローチではないが、さしあたり有限体の元を成分に持つ行列に…

有限体上の線形代数を探訪する ~ 数ベクトル編その2 ~

前回の記事で有限体の元を成分に持つ数ベクトルについて考えた。本当は次は行列についての記事を書こうと思ったのだが、そちらを書いている最中に数ベクトルの一次独立性について疑問点が生じてきたので、本稿ではそれについて考えてみる。 正標数はつらいよ…

有限体上の線形代数を探訪する ~ 数ベクトル編 ~

有限体上での線形代数はどうなるのか? 以前の記事で有限射影幾何というものを少し扱った。その中で、そもそもそんな難しいことをやる以前の問題として、有限体上の線形代数が分かっていないことが致命的に厳しいと感じた。例えば、や上での線形代数でよく使…

今こそJordan標準形と向き合う

線形代数を勉強して、Jordan標準形という言葉を耳にしたことがない人はいないだろう。Jordan標準形とは、ざっくり言えば行列の対角化を一般化したようなものである。行列の対角化はいつでもできるとは限らず、報われない行列たちが存在する。一方、Jordan標…

固有ベクトルの観点から線形変換を掌握する

線形代数において、固有値と固有ベクトルの話題は花形である。これらは理論的に美しいだけでなく、応用上様々な場面に登場し、重宝されている。中でも固有値が力を発揮するのは、やはり行列の対角化を行う時であろう。すなわち、n次正方行列がある条件を満た…