閉形式の線積分とポテンシャル場の線積分

今日も微分形式とベクトル解析について書く。テーマは経路に依らない線積分である。

まず、ポテンシャル場における線積分について説明する。あるベクトル場 {\bf f}において、経路Cに沿った線積分を行うことを考える。Cの始点は点P、終点は点Qであるとする。このとき、もし {\bf f} = \mathrm{grad}\, \phiを満たす関数 \phiが存在するとき、この線積分は以下のように経路に依らない値を取る。

{ \displaystyle
\int_C {\bf f} \cdot d{\bf r} = \phi(Q) - \phi(P)
}

実はこれに対応する定理が微分形式の世界にも存在する。例によって「多様体の基礎」を見てみると、以下のように記載されている。

 \omegaが閉じた1次微分形式( d\omega = 0)ならば、曲線cをその始点c(a)と終点c(b)を止めたまま多様体Mの中で連続変形しても、線積分 \int_c \omegaの値は変らない。

ここで、閉じた微分形式、または閉形式とは、外微分を計算すると0になるような微分形式のことである。前回の記事でgradは0次微分形式、つまり関数に対する外微分に相当するということを述べた。さらに、外微分の外微分を計算すると常に0になることから、 {\bf f} = \mathrm{grad} \phiは閉形式である。結果として、ポテンシャル場における線積分は閉形式の線積分によって一般化されるのである。本当に微分形式さえあればベクトル解析は不要なのではないかと思うほど、微分形式はベクトル解析をうまく取り込んでいる。

今日一番言いたかったことは以上であるが、上で引用した定理について一点だけ補足する。この定理では多様体M上での線積分について述べているわけだが、そもそも多様体上での線積分とはどのように定義されるのであろうか?これは \mathbb{R}に対する引き戻しによって定義される。すなわち、ある写像 c: \mathbb{R} \ni [a, b] \to Mがあって、これと閉形式 \omegaの合成写像積分を考えるのである。以下に定義式を示す。

{ \displaystyle
\int_c \omega \overset{\mathrm{def}}{=} \int_{[a, b]} \omega \circ c
}

これにより、被積分関数の定義域をMから \mathbb{R}に引き戻すことができ、見事に線積分が定義できるのである。

さて、大晦日ということで今年一年を振り返ってみると、後半にこれまで学んできたことの復習に重点を置いたことで、より数学に対する深い理解が得られたのではないかと思う。特に、ガロア理論の基本的な部分に対して定性的な理解を得られたことは至上の喜びであった。来年は仕事がちょっと忙しくなりそうだが、うまく時間を見つけて数学の勉強を続けていきたい。では、良いお年を!

参考

多様体の基礎 (基礎数学5)

多様体の基礎 (基礎数学5)

li.nu