いくつかのLie群がLie群であることを定義に戻って確かめる
Lie 群は難しい。この理由の1つは、議論の前提となる領域が広いことにあると思われる。Lie群とは群であり多様体であるような数学的対象である。そのため、定義を理解するだけで群論と多様体の知識が求められる。また、Lie群の教科書で最初に扱われるような基本的なLie群は行列群である。しかも、そのコンパクト性に着目した議論も多い。そのため、線形代数と位相空間の基礎的な事項も理解しておくことが望ましい。
繰り返すが、Lie群は難しい。私はここ最近Lie群を勉強し始めて、この事実を痛感している。こういう時は足元を一歩ずつ踏み固めて行くしかない。その一環として、本稿ではいくつかの基本的なLie群について、それらが本当にLie群になっていることを定義に照らし合わせて確認してみる。
本稿では私の独断で以下の2つのLie群を扱う。
- 一般線形群
- 直交群
準備
多様体上の写像が級であるということ
Lie群の定義の中で級写像という言葉が出てきた。この定義を[2]より引用する。
(1) かつ
(2) とに関するの局所座標表示が級である,
この2つの条件がなりたつことである. ただし, .
上記定義においてとすれば級写像の定義となる。
Lie群であることの確認
以上で準備が整ったので、Lie群であることの確認に移る。本稿では群であることの確認はサボり、それぞれのLie群について以下の3点を確認した。
一般線形群
級多様体であること
上次正方行列全体の集合をと書く。はの部分集合のうち、以下のように表されるものである。
実は、はの開部分集合となる。詳細は[3]の命題1.17に譲り、ここでは概要だけ説明する。まず、は連続写像である。このとき、と書ける。はの開集合なので、連続写像による逆像も開集合となる。
ここで、に属する行列の各成分を座標と見なすと、これはと同一視できる。そのため、
は級多様体となる。その開部分集合も級多様体となるので、は級多様体となる。このような多様体を開部分多様体と呼ぶ[2]。
直交群
級多様体であること
これを示すのは思いのほか難しいため、証明のアウトラインだけ述べることにする。詳細は[4]を参照されたい。
次実対称行列全体の集合をとする。はと同一視できるため、次級多様体である。
この時、以下のような写像を考える。
は級写像である。が直交行列のとき、その逆行列はとなる。そのため、となる。ここで、は単位行列である。
もしがの正則値であれば、先ほど提示した定理によりは次級多様体となる。そのためには、の全ての点における微分が全射になれば良い。具体的に微分計算を行い、それが全射であることを確かめるアプローチになるが、体力の限界なのでこれ以降は[4]にお任せする。
参考
[1] http://www.math.tsukuba.ac.jp/~tasaki/lecture/ln2010/2010t.pdf
[2]
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[4] http://math.uchicago.edu/~may/REU2014/REUPapers/Rouse.pdf