今日は一意分解環(UFD)と単項イデアル整域(PID)の関係について、数論に絡むことを書いてみようと思う。
一般に、PIDはUFDである。このことの証明は恐らく多くの環論の教科書に載っているであろうから、本稿では特に触れない。
実は、代数体の整数環においてはこの逆、すなわち「UFDはPIDである」ということが成り立つのである。私が読んでいる「数論Ⅰ」ではこの事実の証明が省略されているため、これが一体どうして成り立つのか疑問に思っていた。先ほどついにこれの証明を見つけたので、本稿ではそれについて書いてみたいと思う。
代数体Kの整数環をと書く。はDedekind環であるから、素イデアル分解の一意性が成り立つ。そのため、任意のイデアルは素イデアルの積に一意に分解される。
がUFDのとき、もしの0でない任意の素イデアルが単項イデアルになることが示せれば、全てのイデアルが単項イデアルになることが示せる。すなわち、が単項イデアル整域であることが示せる。なぜなら、2つの単項イデアルについて、となるからである。
の0でない任意の素イデアルを選ぶ。の0でない元を1つ選び、とする。がUFDであれば、という風に素元の積に分解できる。は素イデアルであるから、となるが存在する。
であり、または素元だからは素イデアルである。デデキント環において、任意の素イデアルは極大イデアルであるから、である。以上により、が単項イデアルであることが示せた。は任意の素イデアルであるから、結局の全ての素イデアルが単項イデアルとなる。よって、証明の初めに述べた通りはPIDとなる。
以上、代数体の整数環がUFDであればPIDであることの証明ができた。そのため、代数体の整数環においてはUFD⇔PIDとなることが示された。
今回この証明を探してもなかなか見つけられなかったわけだが、定理の証明を探すというのはなかなか難しいことだ。どこかに証明データベースがあるか、もしくは実力ある人々が集うコミュニティに気軽に質問できたりすると嬉しいのだが・・・
参考