前回の記事では圏同値について例を用いて説明した。本稿ではその続きとして随伴について小さな例を用いて考えてみる。
随伴
随伴の定義を本[1]より引用する。
naturally in
ここで、"naturally in and
"と書かれているところについて本[1]では定義の後に説明が続いている。丸ごと引用すると長くなるのでやめておくが、要するに以下の二式が成り立つということを言いたいらしい。
ただし、上線は転置 (transpose) と呼ばれるもので、本[1]では以下のように説明されている。
So
本[1]を読み進めると4章で再度この定義に関して振り返っている箇所があるので、そのあたりまで理解しないとこのもやもやは晴れないのかもしれない。ひとまず本稿では2つの射の集まりの間に全単射が構成できて、かつ良い感じの性質を持っているというくらいに考えておく。
例
では例を見てみよう。以下のように圏の間に関手
が存在する状況を考える。

上図の関係を式で書くと以下のようになる。
であることの確認
前述の例においてとなっていることを随伴の定義に照らし合わせて確かめてみよう。初めに
という組について考える。
、
なので、それぞれのただ一つの元が一対一に対応していると考えれば両者の間に全単射を構成することができる。つまり
である。
式(1)(2)についても確認する。から出ていく方向の射は
しかないので、式(1)の左辺と右辺はそれぞれ以下のパターンだけ考えればよい。
この場合、左辺と右辺は一致しており、条件を満たしている。
次に、に入ってくる方向の射は
しかないので、式(2)の左辺と右辺はそれぞれ以下のパターンだけ考えればよい。
この場合、左辺と右辺は一致しており、条件を満たしている。
続いてという組について考えてみよう。
、
なので、それぞれのただ一つの元が一対一に対応していると考えれば両者の間に全単射を構成することができる。つまり
である。
から出ていく方向の射は
しかないので、式(1)は
のケースと同じように成り立つ。
に入ってくる方向の射は
の2つがある。
は先ほどと同様に確かめれば成り立つことが分かるので、
について式(2)の両辺の値を確かめてみると以下のようになる。
左辺値の計算における二つ目の等号について補足する。着目していた組に対して
を手前にくっつけたので、
と考えるべきである。それゆえ先ほど組
のところで説明した通り
となる。
以上により左辺と右辺は一致しており、条件を満たしている。
この調子で全部の対象の組について調べていくのは紙面の都合でやめておくが、最後にという組について考えてみよう。
、
なので、それぞれのただ一つの元が一対一に対応していると考えれば両者の間に全単射を構成することができる。つまり
である。
から出ていく方向の射は
の2つがある。
は先ほどと同様に確かめれば成り立つことが分かるので、
について式(1)の両辺の値を確かめてみると以下のようになる。
左辺値の計算における二つ目の等号について補足する。着目していた組に対して
を後ろにくっつけたので、
と考えるべきである。それゆえ先ほど組
のところで説明した通り
となる。
以上により左辺と右辺は一致しており、条件を満たしている。
に入ってくる方向の射は
しかないので、式(2)は
のケースと同じように成り立つ。
以上、3つの対象の組について調べたが、他の組も同様に調べていけばであることが分かる。
でないことの確認
実は逆向きの随伴は成り立たない。例えば組について考えてみると
、
なので両者の間に全単射を構成することができない。
随伴と圏同値の関係
随伴の定義を見ていると何となく互いに逆向きの関手のペアのような概念に思える。これはいかにも圏同値と関連がありそうである。というのも、圏同値の定義においても互いに逆向きっぽい2つの関手が関係するためである。実際、随伴と圏同値はどういう関係にあるのだろうか?
随伴なら圏同値か?
これは正しくない。例えば先ほど示した例において圏は圏同値ではない。例えば
に対して
となるような
は存在しない、つまり
は本質的全射ではない。「
が悪いのであって、他のちゃんとした関手を選べば圏同値にできないんですか?」という疑問が湧くかもしれないが、
の対象が3つあり、かついずれも互いに同型でないのに対して、
の対象が2個しかないので、どんな関手を持ってこようと
方向に対しては本質的全射になり得ない。
圏同値なら随伴か?
これは正しいらしい。が、本稿の内容だけを前提として証明するのは難しい。元気があればまた別の機会に説明したい。
まとめ
本稿では随伴について例を用いて説明した。また、随伴と圏同値の関連について少しだけ触れた。
随伴にはunitとcounitという大事な概念があるのだが、本稿ではそこまで説明しきれなかった。また、結局のところ随伴とは何なのかという直観的な理解はあまり得られなかったというのが正直な感想である。前者については時間ができたら記事を書きたいと思う。後者についてはいろいろと勉強していくうちに直観が養われていくと信じて頑張りたい。